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・・・「人ッこ一人、……大びけ過ぎより、しんとして薄気味の悪いよう。」「はてな、間違ではなかろうが、……何しろ、きみは、ちっともその方に引っかかりはないのでしたね。」「ええ、私は風来ものの大気紛れさ、といううちにも、そうそう。」 ・・・
泉鏡花
「開扉一妖帖」
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・・・その実は昨夜の酒を持越しのため、四時びけの処を待兼ねて、ちと早めに出た処、いささか懐中に心得あり。 一旦家へ帰ってから出直してもよし、直ぐに出掛けても怪しゅうはあらず、またと……誰か誘おうかなどと、不了簡を廻らしながら、いつも乗って帰る・・・
泉鏡花
「妖術」