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・・・ この世と地獄との間には、闇穴道という道があって、そこは年中暗い空に、氷のような冷たい風がぴゅうぴゅう吹き荒んでいるのです。杜子春はその風に吹かれながら、暫くは唯木の葉のように、空を漂って行きましたが、やがて森羅殿という額の懸った立派な・・・
芥川竜之介
「杜子春」
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・・・ちょうど晩方で、ぴゅうぴゅう風が吹いてたんだ。 尼様が上框まで送って来て、分れて出ると、戸を閉めたの。少し行懸ると、内で、(おお、寒と不作法な大きな声で、アノ尼様がいったのが聞えると、母様が立停って、なぜだか顔の色をおかえなすったの・・・
泉鏡花
「清心庵」