・・・黒い長衣着て黒長靴と云ういでたちの富農、それら三つの頭の上に、どえらいハンマーを握った労働者の手と、カマを持った農民の手とが、こしらえてある。 勇ましい行進曲につれて、その張り物をかついだコムソモールが歩きながら、ヒョイ、ヒョイと糸を引・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・井上秀子女史が戦時中日本女子大学校長としてどのように熱心に戦争遂行に協力したかは当時の学生たちが、自分たちの経験した過労、栄養不良、勉学不能によって骨の髄まで知りつくしていることだろうと思う。そういう校長を絶対勢力として戴いて、どうして教育・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・ 昔、地主に欅の枝の鞭でひっぱたかれた時分は、なるほど字を知らなくたってすんだだろう。富農だけが、金時計の鎖といっしょにポケットへ短い鉛筆を大切にしまっていた。然し、革命は、土地を農民へというスローガンを実現し、農民は自分達の村を自分達・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・当時ソヴェト同盟の遠い隅々で集団農場組織に派遣された技術家とコムソモール、それを支持する貧中農群は富農、昔から村にいて革命を憎んでいる僧侶、籠絡された村ソヴェト員の一隊と、実に必死な階級闘争をつづけつつあった。農村都会プロレタリアートの社会・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ ヤスの生家は×県の富農で、本気なところのある娘だがこういう場合になると、何と云っても真のがんばりはきかない。階級性というものはこういう時こういう具体的な形で現れて来る。ヤスについて自分は兼々そう思っていたことだし、同時に、僅か二ヵ月暮・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ら十二年の星霜を経て、その深刻な根本的改変と建設との成果に立って、社会主義生産の段階に到達し、生産の全面と文化の全部門から利潤追求の企業性を排除しえたとき、国内的に勤労階級と有識人階級との対立、貧農と富農との対立が消えたと認められたことは理・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・階級としての団結力の強化をはかってる。 ――然し、ソヴェトは建設期だろ。階級としての富農や成金に対して断然指導勢力を持ってるのはプロレタリアートじゃないか。 ――そうだ。特に五ヵ年計画の三年目になってる現在では、国内の問題でプロレタ・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・る地方地主の生活に突入っていわばその骨を刻むように書いているつもりなのであるが、結局その努力も主題を発展的な歴史の光によって把握していないから、現象形態だけを追うに止り自身の粘り、社会観の基調がいかに富農的なものであるかまでを鋭く分析はし得・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・だから、彼は飽くまでも経験主義者らしく、また百姓バルザの野心大なる孫息子らしい富農的現実性で、プロレタリアート鎮圧のためには、「彼等すべてに所有の感情を与えよう」とか、カソリック宗教だけが金銭に対する慾心の焔に水をかけるものであるとか、彼等・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・を利用する富農の強化などによって、驚くべき勢で農村の階級的分裂が促進されつつあった。ロシアには一千万の労働者と、その二倍の貧農が発生しつつあった。ロマーシとゴーリキイのまわりに親密な感情をもって集ったのは、クラスノヴィードヴォの村での、そう・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫