・・・そうして梨を作り、墨絵をかきなぐり、めりやすを着用し、午の貝をぶうぶうと鳴らし、茣蓙に寝ね、芙蓉の散るを賞し、そうして水前寺の吸い物をすするのである。 このようにして一連句は日本人の過去、現在、未来の生きた生活の忠実なる活動写真であり、・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・眼がぐるぐるして、風がぶうぶう鳴ったんだ。樺の木も楊の木も、みんなまっ黒、草もまっ黒、その中をどんどんどんどんペムペルはかけた。 それからとうとうあの果樹園にはいったのだ。 ガラスのお家が月のあかりで大へんなつかしく光っていた。ペム・・・ 宮沢賢治 「黄いろのトマト」
・・・ もう食堂のしたくはすっかり出来て、扇風機はぶうぶうまわり、白いテーブル掛けは波をたてます。テーブルの上には、緑や黒の植木の鉢が立派にならび、極上等のパンやバターももう置かれました。台所の方からは、いい匂がぷんぷんします。みんなは、蚕種・・・ 宮沢賢治 「紫紺染について」
・・・向うには、髪もひげもまるで灰いろの、肥ったふくろうのようなおじいさんが、安楽椅子にぐったり腰かけて、扇風機にぶうぶう吹かれながら、「給仕をやっていながら、一通りのホテルの作法も知らんのか。」と頬をふくらして給仕を叱りつけていました。・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
出典:青空文庫