・・・今はもう人数も減り、圧迫されて仕舞ったアメリカン・インディアンが到る処に生活していました。畑と云う畑もなく、都市と云う都市もない。フランス、スペイン等の各国が、おのおの土地開拓に努力している。 まるで、私共が、急にアフリカの真中にでも移・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・カステラがあと一切分ほか残りがなくなったりすると急に減り目を目立って心に感じて、「もうこれっぽっちになったのかねえ。なんかと云う。 祖母の口へ入るより来る者の喰べる方がどれだけ多いか分らない。 東京の習慣だと客に行っ・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ だが、ゴーリキイにとって話したい、打ちあけたい生活の苦痛、錯綜した印象の回旋そのものはやまらない。減りもしない。当時は又夥しくトルストイアンが現れ「眼には憎悪と軽侮とを現わしながら『真理――それは愛です』と叫び」ながら客観的にはポヴェ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ だが、ゴーリキイにとって話したい、打ちあけたい生活の苦痛そのものはやまらない。減りもしない。当時夥しく現れたトルストイアン達の嘘偽の多い生活態度は、慈悲とか愛とかいう問題についても、突きつめた、勤労者らしい鋭い疑問をゴーリキイの心に捲・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 二階に居る時 ヘリのないぞんざいな畳には、首人形がいっぱいささって夢□(の紙治、切られ与三、弁天小僧のあの細い線の中にふるいつきたい様ななつかしい気分をもって居る絵葉書は大切そうに並んで居る。京の舞子の紅の振、玉虫・・・ 宮本百合子 「芽生」
・・・ 一九三〇年の初夏からモスクワの辻馬車は数でぐっと減り、馬車賃で倍あがった。 モスクワ人は馬車にあふれる程荷物をつみこみ、而も、たとえばステーション前などではスラブ人的忍耐を極度に活用して、賃銀協定をやるのであった。こういう事情がな・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
・・・ 良人の方に、まず、何故この頃どの会社でも月給は上らず、手当は減り、しかも何ぞというとクビ、クビでおどすかという訳を、毎日の暮しの間に細かく説明して見せたら、どんなものでしょう。 万一クビになり、しかも良人が病気になりでもしたら、暮・・・ 宮本百合子 「「我らの誌上相談」」
・・・患者の食慾が減り始めた。人々はただぼんやりとして硝子戸の中から空を見上げているだけにすぎなかった。 こうして、彼の妻はその死期の前を、花園の人々に愛されただけ、眼下の漁場に苦しめられた。しかし、花園は既にその山上の優れた位地を占めた勝利・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫