・・・い型式の生物が多数に発生したであろうということも想像できるのであるが、それと同じように文化的要素の進化の道程における突然変異もまたその時代におけるいろいろな外的条件に支配されるものであって紫外線X線の放射、電流の刺激、特殊化学成分の過剰ある・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・なおこれらの元素は必ずしも不変なものではなくて、たとえば放射性物質のごとく、時とともに自然に崩壊し変遷する可能性を持つものと想像する。それでかりに地球歴史のある一定の時期において、ある特別の地点において、特殊の国語が急に発生したと仮定すると・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・前世紀の末頃までは原子までで事が足りていたが、真空中放電の研究や放射能性物質の研究から更に原子の内部構造を考えなければならぬ破目になって、ここにエレクトロンなるものが発見される事になった。今日ではほとんどこの電子の実在を疑う者はない。放射性・・・ 寺田寅彦 「物質とエネルギー」
・・・またスイスの山間の中学校の先生が粗末な験電器の漏電を測っていたことが、少なくも間接には近代電子的物質観への導火線となり、放射性物質の発見にも一つの衝動を与えたような形になった。現在先端的な問題の一つと考えらるる宇宙線の研究でも、実はこの昔の・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・化学的現象は勿論の事、ブラウン運動等の研究はますます分子原子の実存を証するようになり、真空管や放射性物質の研究はどうしても電子の存在を必然とするようになって来た。人間が簡単を要求しても自然はそれには頓着しない。ただ複雑な変化の微小な事、また・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・そして天外より飛来する粒子の考えなどは、現在の宇宙微塵や太陽からの放射粒子線を連想させる。 次に地震の問題に移って、地殻内部構造に論及するのは今も同じである。ただ彼は地下に空洞の存在を仮定し、その空洞を満たすに「風」をもってしたのは困る・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・してすぐ応用ができるというのが私の意見で、なぜそう応用ができるかという訳と、かく応用された言葉の表現する道徳が日本の過去現在に興味ある陰影を投げているという事と、それからその陰影がどういう具合に未来に放射されるであろうかという予想と――まず・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・ この放射作用と前に申した分化作用が合併して我以外のものを、単に我以外のものとしておかないで、これにいろいろな名称を与えて互に区別するようになります。例えば感覚的なものと超感覚的なものに分類する。その感覚的なものをまた眼で見る色や形、耳・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・内側に向かっても放射するのか、全身が黒くなる。そして、八本足で立って歩きながら逃げようとする。イイダコ釣りは面白いので、私はヒマを見つけるとときどき試みるが、一日に六十匹も引きあげたことがある。 役者の佐々木孝丸さんは、ペルリ上陸記念碑・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・ もうしご冥加ご報謝と、 かどなみなみに立つとても、 非道の蜘蛛の網ざしき、 さわるまいぞや。よるまいぞ。」「小しゃくなことを。」と蜘蛛はただ一息に、かげろうを食い殺してしまいました。そしてしばらくそらを向いて、腹をこす・・・ 宮沢賢治 「蜘蛛となめくじと狸」
出典:青空文庫