・・・ブルジョア・インテリゲンツィア作家は、一年来声を大きくして来た文芸復興を内容づけるためのリアリズム検討につれ、プロレタリア作家の或る者は、社会主義的リアリズムに対する或る種の解釈の模型として、バルザックの花車は、急調子に、同時に些か粗忽に、・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・「日本文化の一切の根底は無の単純化から咲き出したもので、地球上の凡ての文化が完成されればこのようになるものだという模型を作っているような社会形態が日本だと思う。」「つまり知性の到達出来る一種の限界まで行っている義理人情の完璧さのためにも早や・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・石膏模型、骨の見本、マリアは僅かの間にジュリアンのアトリエで一番技術をもったブレスロオという娘を唯一の競争相手とするところまで突進した。マリアの異常な才能は輝き出した。それにしても、マリアのいそぎよう! 彼女の日記のどの頁にも、芸術の成功に・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
トゥウェルスカヤの大通を左へ入る。かどの中央出版所にはトルキスタン文字の出版広告がはりだされ、午後は、飾窓に通行人がたかって人間と猫の内臓模型をあかず眺める。緑色の円い韃靼帽をかぶった辻待ち橇の馭者が、その人だかりを白髯の・・・ 宮本百合子 「モスクワ印象記」
・・・この時代は母系の制度が行われていた。一つの氏族内の母方の子供は、先任の酋長が男であろうと女であろうと選挙されればその地位を継承する権利を持っていた。このことは、もうその頃から女の力が、産業と毎日を生きてゆく家事との上で、どれ程大切な役目を持・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫