・・・たちまち空で白いけむりが起り、ポンポンと音が下って来それから青い柳のけむりが垂れ、その間を燕の形の黒いものが、ぐるぐる縫って進みました。「さあ式場へ参りましょう。お前たち此処で番をしておいで。」陳氏は英語で云って、それから私らは、その二・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・そして麦束はポンポン叩かれたと思うと、もうみんな粒が落ちていました。麦稈は青いほのおをあげてめらめらと燃え、あとには黄色な麦粒の小山が残りました。みんなはいつの間にかそれを摺臼にかけていました。大きな唐箕がもう据えつけられてフウフウフウと廻・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・ 籠はフットボールのようにぽんぽん跳ねて一太にぶつかった。おかしい。面白い。一太は気のむくとおり一人で、駈けたり、ゆっくり歩いたりして往来を行った。 一太は玉子も売りに出た。 玉子のときは母親のツメオが一緒であった。玉子を持って一太・・・ 宮本百合子 「一太と母」
・・・ 中腰になって部屋の角へ、外套だの、ネルの襟巻だのをポンポン落してから、長火鉢の方へよって来た栄蔵はいつもよりは明るい調子で物を云った。「まだ何ともきまらん。 けど、奥はんが大層同情して、けっとどうぞしてやるさかいに又明日来・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ けど、私だってよそに来て居るのに、先の様に用立てて居る上に又、あんまりぽんぽん血の様な金をつかっても居られないじゃあありませんかい。 あれだって、私は一度だって、返して下さいなんて云った事はないじゃあありませんか。 そう云・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・俺はいやだ、って…… ミーチャは手に持ってた針金の束でポンポン自分の脛をたたいた。 ――じゃ何かい、フェージャは……馬鹿らしい! お前達んところにはこうやってちゃんと独立した室があって、職業があって、しかも工場にあんないいヤースリが・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
出典:青空文庫