・・・ 世界思想史について些の常識を有する者には小林氏の以上のようなロシア文学史についての見解はそれなり賛同しかねるであろうし、特に明治社会と文化との生成の間、全く未開のまま通過され異質のものに覆われてしまった中江兆民の時代の思想の意義を、抹・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・幼稚であり、未開であるにしろ、生活にこれが第一、というのを把持していた、いようとした跡が見える。 今日、私共の上野図書館は、遙に進んだシステムによって管理されている。が、アの部を牽くと、アイ藍が真先に出る! そして誰もこれに驚かない・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・客観的な状勢が平和の可能をもっており、世界の人類がそれを望まない時日本の人だけが未開の国の人のようにまるでそれが地震か何かのように起るだろうか起らないだろうかと心配しているとすれば、それはあんまりみじめなことではありませんか。 世界の婦・・・ 宮本百合子 「世界は平和を欲す」
・・・ 昔の人や、未開な国では女の子に月経があるようになると、もう大人になったシルシという。そして嫁にやったりする。どんな子が生れるかというと、恐ろしい! まるで蛙の子のようにヒヨヒヨな赤坊が生れ、しかも、女の子は二十にならぬうち、もう婆のよ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト映画物語」
・・・それは、遠い昔、政治的思想的に紛糾を重ねた欧州の故国を去って、未開の新土に生活を創始しようと覚悟した程のものは、皆、何等かの意味に於て、強い箇人の自覚と、何物にも屈しない独立心を備えていたからなのです。 アメリカと云っても、往古の状態は・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 第一次大戦までは、まだ地球の端々にのこされていた未開の人々の社会での出来ごとである。その野蛮人たちの男は狩りを仕事とし、女は木の葉でふいた小舎の前で穀物をついたり、酒をかもしたりして働き、彼等の間では結婚の形態も、原始のままで行われて・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・壮大な柱の根もとに穢い木綿坐布団が畳んでつくねられてあるのを見ると、異様に未開な感じがした。未開な、暗い頭脳が一むきに、ぜすきりしとを信奉し、まことに神の羊のように一致団結して苦難に堪えて来た力は、驚くべきだ。公平な立場から書かれた歴史を読・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・あんなに静かに流れ、手ですくっておいしく飲めるその水が、天からどうどうと降りそそげば、彼等の穴ぐらは時々くずれたり狩に行けないために飢えなければならない時さえあった。未開な暗さのあらゆる隅々に溢れる自然の創造力の豊かさを驚き崇拝した原始の人・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・或る時舞踏の話が出て、傍の一人が僕に舞踏の社交上必要なわけを説明して、是非稽古をしろと云うと、今一人が舞踏を未開時代の遺俗だとしての観察から、可笑しいアネクドオト交りに舞踏の弊害を列べ立てて攻撃をした。その時爺いさんは黙って聞いてしまって、・・・ 森鴎外 「百物語」
・・・我々はそれによっていわゆる未開人をいかに見るべきかを教えられる。フロベニウス自身が指摘しているように、人類の文化の統一は、ただこのような理解を通じてのみ望み得られるのである。 自分はこの書を読み始めた時に、巻頭においてまず強い激動を受け・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫