・・・写真屋の資本の要らない話、資本も労力も余り要らない割合には楽に儲けられる話、技術が極めて簡単だから女にでも、少し器用なら容易に覚えられる話、写真屋も商売となると技術よりは客扱いが肝腎だから、女の方がかえって愛嬌があって客受けがイイという話、・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・かつ対談数刻に渉ってもかつて倦色を示した事がなく、如何なる人に対しても少しも城府を設けないで、己れの赤心を他人の腹中に置くというような話しぶりは益々人をして心服せしめずには置かなかった。 二葉亭を何といったら宜かろう。小説家型というもの・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・この方針から在来の女大学的主義を排して高等学術を授け、外国語を重要課目として旁ら洋楽及び舞踏を教え、直轄女学校の学生には洋装せしめ、高等女学校には欧風寄宿舎を設け、英国婦人の監督の下に欧風生活を実習させて、日本の女をして一足飛びに西洋の女た・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・新たに町村は設けられました。地価は非常に騰貴しました、あるところにおいては四十年前の百五十倍に達しました。道路と鉄道とは縦横に築かれました。わが四国全島にさらに一千方マイルを加えたるユトランドは復活しました、戦争によって失いしシュレスウィヒ・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・「人間のみずから設けた禁猟区にいて、こちらの身の安全をはかるということは、なんと賢明なやり方ではないか。もしここを飛び出したが最後、自分たちは、いつどこで、どんな危険にさらされないともかぎらないだろう。」と、Bがんが、いいました。「・・・ 小川未明 「がん」
・・・御寮人さんはその一軒の低い軒先をはいるなり、実は女子衆に子供がちょっともなつかしまへんよってと、うまい口実を設けていもりの雄雌二匹を買った。 帰り途、二つ井戸下大和橋東詰で三色ういろと、その向いの蒲鉾屋で、晩のお菜の三杯酢にする半助とは・・・ 織田作之助 「大阪発見」
・・・ 金儲けだときかされると、途端におかね婆さんは歯ぐきを出して、にこにこし、つまりは何の造作もなく説き伏せられてしまった。 だが、さて、どんな風に実行に移したものかという段になると、丹造にはからきし智慧もなく、あくまで相棒が要った。い・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・それと、もうひとつこれもおれの智慧だが、同じ薬に上製と特製の二種類を設けたことが、非常に効果的だった。どうせ、中身はたいして変らぬのだが、特製といえば、なにか治りがはやいように思って、べらぼうに高価いのに、いや、高価いだけに、一層売れた。知・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・ 年の暮の一儲けをたくらんで簡単に狸算用になってしまったかと聴けば、さすがに気の毒だったが、しかし老訓導は急に早口の声を弾ませて、「――しかし行ってみるもんでがすな、つまりその、金巾は駄目でがしたが、別口の耳寄りな話ががしてな、光が・・・ 織田作之助 「世相」
・・・うのはいわば臨時雇で宴会や婚礼に出張する有芸仲居のことで、芸者の花代よりは随分安上りだから、けちくさい宴会からの需要が多く、おきんは芸者上りのヤトナ数人と連絡をとり、派出させて仲介の分をはねると相当な儲けになり、今では電話の一本も引いていた・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
出典:青空文庫