・・・人間同士の友誼が、対手の死なせかたに表現されなければならなかった当時のモラルも柄本又七郎の行動で表徴されているし、悪意ある方策によってかまえられた名誉の前に、生きるに生きがたい死を敢てする若い竹内数馬の苦痛に満たされた行動は、内藤長十郎が報・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 党も、同伴者作家団を認めたと同じ友誼的指導的な態度で、全露農民作家協会に対して来た。一九二五年の文学に関するテーゼは、その組織に対する支持と、農民に影響するために必要な農民文学の独特な形象を保護することなどを明言した。 成程、ロシ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ジダーノフの報告には、それらの雑誌の編輯者が、「友誼上」公私混同したと表現されている。ジダーノフは二つの雑誌の編輯者が、苦しまぎれにした弁明を、いちおうまともに受けてやっているのだとしか思われない。なぜならこのごろ、日本のような稚い民主社会・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・いま、わたしたちが、中国人民の勝利に対して衷心からのよろこびと友誼の感情を語るにつけ、日本の帝国主義が、中国解放のために最悪の妨害的存在以外の何ものでもなかったという事実を思いかえさずにはいられません。しかし、中国の人々は人民たる真情によっ・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・と声を張りあげ、情熱をもって、各友誼団体からのメッセージを読みあげた。が、文句が「革命」「ハリコフ」という市の名、「共産主義的」又は「ナップの国際的拡大」という言葉にふれようものなら、忽ち、 中止!だ。「――農民は野蕃人のよ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ コロレンコとの友誼が深められた理解の上によみがえった。「チェルカッシュ」はこの時分コロレンコに励まされ、たった二日で書いたものである。 ゴーリキイは自分の文学的労作について、だんだん真面目に考えるようになって来た。それと共に、フラ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・それは彼にとって確に愉快な遊戯であった。 と、忽ち、秋三は安次を世話する種々な煩雑さから迯れようとしていた今迄の気持がなくなって、ただ、勘次の家を一日でも苦しめてみることに興味を持った。「おい、南の勘とこへ行かんか。あいつはお前とこ・・・ 横光利一 「南北」
・・・日本画家は手に合わぬものを弄んで、生命のない色と線の遊戯に堕する傾向を示している。 洋画家の自然に対する態度はとにかく謙遜である。ある者は自然の前に跪拝し、ある者は自然を恋人のごとく愛慕する。そうして常に自然から教わるという心掛けを失わ・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・ しかし少年時代からこの苦労をなめて来た藤村にとっては、それは、思想的遊戯の問題などではなかった。おそらく藤村自身それをはっきりと反省の材料となし得ないほどに、それは藤村のなかに深くしみ込んでいたであろう。藤村は、無性格などということと・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫