・・・ですから、生れるから北上の河谷の上流の方にばかり居た私たちにとっては、どうしてもその白い泥岩層をイギリス海岸と呼びたかったのです。 それに実際そこを海岸と呼ぶことは、無法なことではなかったのです。なぜならそこは第三紀と呼ばれる地質時代の・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
・・・そして第十八へきかい予備面が痛いと。なるほど、ふんふん、いやわかりました。どうもこの病気は恐いですよ。それにお前さんのからだは大地の底に居たときから慢性りょくでい病にかかって大分軟化してますからね、どうも恢復の見込がありません。」病人は・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・これらの飾らず、たくまざる人々の記録と、職業家のルポルタージュとの対比は、文学に関心をもつ者の心に真摯な考慮を呼びさまさずにはいない。又、いつかは「支那さん」と呼ばれている人々の記述も広汎な世界の文学の領野にあらわれて来る日があるであろう。・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・失業の予備軍となっている。しかしそういう点で共通の幸福を守ること、その協力の意味を理解しない男の人たちは、組合が要求するから仕方がないようなものの、女のくせに生意気だという感情を捨てきっていない。組合の中で婦人部と青年部とはよく調和して活動・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・一九一四年度ロシアの中学校、実務学校、予備学校における学生の出身階級の分布 世襲貴族の子弟 六・三 貴族及高官 一八・四 宗教家 四・八 紳士及紳商 九・六 商人、組合の親方 三二・一・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ソヴェトの党・労働組合がプロレタリアートの中から優良な技術家を養成しようとして、あらゆる場所に工場学校、労働予備学校、専門技術学校を設置していることの革命的意義はここにある。 芸術の領域で、プロレタリア作家たちが、そのスローガン「プロレ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・しかし、この一つの事実は、その事実が結論されて来るまでの条件として他のもう一つの予備的事実をふくんでいる。それは一九四九年度の調査のために、毎日新聞は一九四七年度の調査にあらわれた特に読書率の低い地方を対象としたということである。大都市より・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・しうる産業予備軍として、ある歴史の段階に到るまでは労働者階級の負担とならないわけにはゆかなくさせられている。 一九四九年まで、日本の民主化は、日本の独立と自由と平和について語った。敗戦日本の社会悪に対しても、すべての人々が市民として・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・十年前に労働予備軍に加った人々の生活が低下しつつある傍ら、新しい青年層の無産者化が大量に行われつつある。それ故詳しく具体的に見れば、今日の大衆の実質の中には、画期的な多量さで知識人要素が内包されて来ているわけである。大衆の質も量も、この十年・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・太閤記と云う名をきいただけで、日本の庶民の伝承のうちにめをさます予備感情がある。だから、戦時中は小才のきく部隊長のような藤吉郎が清洲築城に活躍しても、よむ人は、逆に、やっぱり秀吉ほどの人物は、と、自分たちが非人間に扱われている現状に屈する方・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
出典:青空文庫