・・・片言のイタリア語でお神さんに「コレ、日本の地質学者。……ダメ」と云ったようなことを云ってやったつもりである。 次の日はポツオリに行って腹立たしくうるさい案内者に悩まされながらセラピスの寺の柱に残る地盤昇降の跡を見、ソルファタラ旧火口の噴・・・ 寺田寅彦 「二つの正月」
・・・この大会には、ドイツ、イタリア、日本をのぞいて、中国その他各国から代表的な進歩的作家が集った。そして「文化遺産」「社会における作家の役割」「個人」「ヒューマニズム」「民族と文化」「創作上の諸問題と思想の尊厳」「組織の問題」「文化の擁護」の諸・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・「心の河」「イタリアの古陶」等。湯浅芳子を知る。夏、離婚した。長篇「伸子」の第一部「聴き分けられぬ跫音」を書き、『改造』へのせた。一九二五年「伸子」を三、四度にくぎって『改造』へ連載。他に「吠える」「長崎紀行」「・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・○愛ということを一ぺんも云わない。○イタリアの情熱 自立の満足を一気にもとめる情熱情熱的な感受性は行為を要求し、言葉を要求しなかった。 スタンダール パリアノ公爵夫人○アンポンといろんなところでねるの・・・ 宮本百合子 「無題(十三)」
・・・ファシズムの下で戦争にかりたてられ不安のどん底におちいった国の婦人たちが、四年経った今日、イタリアなどではおどろくほど多数の婦人がファシズムに反対し、人民の民主主義を建設するための統一戦線に組織されています。日本ではどうでしょう。婦人の生活・・・ 宮本百合子 「求め得られる幸福」
・・・そしたら進撃の譜は吹かないで、rveil の譜を吹いた。イタリア人は生死の境に立っていても、遊びの心持がある。兎に角木村のためには何をするのも遊びである。そこで同じ遊びなら、好きな、面白い遊びの方が、詰まらない遊びより好いには違いない。しか・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・大学にいる間、秀麿はこの期にはこれこれの講義を聴くと云うことを、精しく子爵の所へ知らせてよこしたが、その中にはイタリア復興時代だとか、宗教革新の起原だとか云うような、歴史その物の講義と、史的研究の原理と云うような、抽象的な史学の講義とがある・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ イタリアの文学で、D'Annunzio は小説にも脚本にも、色彩の濃い筆を使って、性欲生活を幅広に写している。「死せる市」では兄と妹との間の恋をさえ書いた。これが危険でないなら、世の中に危険なものはあるまい。 スカンジナウィアの文・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・四 フランスやイタリアの作家には饒舌が眼につく。私はダヌンチオやブウルジェエの冗漫に堪え切れない。トルストイに至ってはさすがに偉大である。たとえばあの大部なアンナ・カレニナのどのページを取ってみても、私は極度に緊縮と充実とを・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
・・・ 木下は青年のころゲエテの『イタリア紀行』を聖書のごとく尊んでいた。この書が彼にいかに強く影響しているかは、『地下一尺集』の諸篇を読む人の直ちに認めるところであろう。確かに『イタリア紀行』のゲエテは彼のよき師であった。しかし彼はこの師に・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
出典:青空文庫