・・・ 小露地方や、北コーカサスの自然は、詩趣に富んで、自由な気が彼等の村落生活に行きわたっていることは、トルストイ、ゴリキイ、其他の作家の作品に描かれている。フィンランドは、世界中で、一番生活のしよい処だということであった。而して陰惨なペト・・・ 小川未明 「北と南に憧がれる心」
・・・ これらスローガンを書いた赤い横旗を捧げて行く二人の女は、コーカサスの風俗をしている。 オヤ、何だ? あすこから来るのは。 石段の上下にあふれている見物の群衆は一斉に賑やかな行進曲の聞える上手の一団を眺めた。 近づいて見・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ コーカサスの雄大極まりない山嶽を南へ縫ってウラジ・カウカアズから、スターリンの故郷チフリースまで、立派な自動車道が通っている。今日そこを走るのは、労働者・農民の陽気な観光客を満載した遊覧乗合自動車だ。が、道普請は、昔そのためにされたの・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・「ドン地方、北コーカサス地方が主です」「ふふむ――で、ヴォルガ沿岸地方は?」「二八年にヴォルガを下って、その時分はニージュニ・ノヴゴロドに、まだソヴェト・フォード工場さえなかった」「ぜひ、ヴォルガ沿岸へいらっしゃい!」 ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 向うの方でも負けてはいない。コーカサス地方の服装をした労働婦人が、長い白絹の布を手にもって、やさしい故郷の踊をおどりはじめる。 地面の上が喜びあふれるメーデーのデモで埋っているばかりではない。 空に、快い爆音がある。飛行機だ。・・・ 宮本百合子 「勝利したプロレタリアのメーデー」
・・・ 有名な定期市が終った朝、ニージュニ・ノヴゴロドからイリイッチ号という小ざっぱりした周遊船にのって、秋のヴォルガを五日かかってスターリングラードまで下り、そこからコーカサス、チフリスと経て、アゼルバイジャン共和国の首府バクーへ来たのであ・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・モスクワを中心とする黒土地方一帯、ヴォルガ地方、シベリア、北コーカサス地方。そこいらじゅうの集団農場では春の蒔つけ時だ。都会の工場から農村手伝いの篤志労働団が、長靴をはいて、麻袋を背負って特別列車にのっかって、八方へひろがった。 同時・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 白い木綿や麻のルバシカを着たソヴェトのプロレタリアートに支那人もコーカサス人もグルジヤ人も混って、愉快に大衆遊戯などやってる光景は、実に世界に二つとない見ものだ。 昔から、劇場は夏になると閉められ、軽い芝居を公園の中の夏舞台でやる・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の夏休み」
・・・プロメシウスが、ジュピターによって地球の骨といわれたコーカサスの山にしばりつけられ、日毎新しくなる肝臓を日毎にコーカサスの禿鷹についばまれて永遠に苦しみつづけなければならない罰を蒙った、というこの物語の結末を、後代からは叡智の選手のように見・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・この秋、洋々たるヴォルガ河を下り、湯浅とコーカサス、バクー油田、ドン・バス炭坑見学をした。一九二九年正月から四月いっぱい、猛烈な胆嚢炎でモスクワ〔大学〕第一附属病院に入院した。五月から十一月末までベルリン、ウィー・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫