・・・歳暮大売出しの楽隊の音、目まぐるしい仁丹の広告電燈、クリスマスを祝う杉の葉の飾、蜘蛛手に張った万国国旗、飾窓の中のサンタ・クロス、露店に並んだ絵葉書や日暦――すべてのものがお君さんの眼には、壮大な恋愛の歓喜をうたいながら、世界のはてまでも燦・・・ 芥川竜之介 「葱」
・・・夕陽。サンタ・マリヤ。「つかれた?」「ああ。」 これが人の世のくらし。まちがいなし。七日。 言わんか、「死屍に鞭打つ。」言わんか、「窮鳥を圧殺す。」八日。 かりそめの、人のなさけの身にしみて、まなこ、うる・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・ああなさけぶかいサンタマリヤ、まためぐみふかいジョウジ スチブンソンさま、どうか私どものかなしい祈りを聞いてください」「ええ」「さあいっしょに祈りましょう」「ええ」「あわれみふかいサンタマリヤ、すきとおる夜の底、つめたい雪の・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・「サンタ、マグノリア、 枝にいっぱいひかるはなんぞ。」 向う側の子が答えました。「天に飛びたつ銀の鳩。」 こちらの子がまたうたいました。「セント、マグノリア、 枝にいっぱいひかるはなんぞ。」・・・ 宮沢賢治 「マグノリアの木」
出典:青空文庫