・・・赤いプラカートがスルスルと舞台一杯におりて来て、舞台からとびおりて俳優が観客席の間を右往左往、小鬼みたいに叫びながら馳けずりまわり、パッとそれが消え、再び舞台が明るくなったと思うと、映画のフラッシュ・バックの手法で、そこにもとのまんま「一同・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・パール・バック女史は、日本人は食べるものと住むところさえあれば、あとはどうでもよいのだという意味の意見を発表されているそうですが、人民の精神は決してそれだけではありません。もしそうであるならば、どうしてこんにちの人民の共和国が中国にありえた・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・パール・バックの作品の程度のものさえもない。アリス・ホバードのように中国における外国資本主義の活動の跡づけもない。その人々が個人としてどんなに聰明でも、侵略者の位置にたったとき、真実はその人からかくされる。 日本に世界の平和と人類の幸福・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・などで世界の読者に親しまれているパァル・バックが中国を愛する心持と、アグネス・スメドレーの広々とした感情とは、今世紀の二つの女の社会性のタイプであると思う。 バックが中国を理解し、愛していることは一朝一夕のものではない。そこには彼女の父・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・ 地理的に近いのに日本の文学者がせめてパール・バックの「大地」ほどの作品をも生んでいないのは、明治以来の日本と中国との〔十五字分伏字〕文化に反映している結果であると思う。〔一九三七年十月〕・・・ 宮本百合子 「中国文化をちゃんと理解したい」
・・・ パール・バックは、中国の庶民の女の生きる力のつよさ、殆ど毅然たる勇猛心を実によく感得した。それら中国の妻たち、母たちは、高い身分から低い身分の女に到るまで、親愛と敬歎をもって描かれている。しかし、文学というものの微妙さ、民族性というも・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・漁師のパック、詩人トック、音楽家クラバックなどの活躍する芥川の河童の国には、生活と判断とが溌溂と盛られていて、作者の社会批評と人生と芸術への気持が、積極な熱をもって流れている。 それにもかかわらず、河童の国へ墜ちなければ、クラバックの直・・・ 宮本百合子 「日本の河童」
・・・それらの婦人たちは、それぞれの歴史的な時期で中国の男女の生活を見聞きして、生活の交渉をもって来たわけであるが、パァル・バックの作品を知るまで私は、そういう条件で中国にいて、中国を小説に描いたヨーロッパの婦人作家を知らなかった。「大地」「・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・そして、ジョン・ハーシーや、パール・バックやアグネス・スメドレー、エドガー・スノウ、ヒュー・ディーンその他見る夢のなかに中国があらわれることのある人々の精神は、東洋にとって貴重なだけではない。アメリカの常識の良識と誇りあるべき民主主義にとっ・・・ 宮本百合子 「「ヒロシマ」と「アダノの鐘」について」
・・・窓からは遠く森や丘のつらなった外景と、その上の空が見えていて、風景は骨組の大きい一人物の肖像のバックをなした。深くはげ上ったかたい前頭。熱中して性急に話すにつれて、その主張をききての心の中へ刺しこもうとするように動き出す右の手と人さし指の独・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫