・・・ある会があって、お濠端の前の建物のバルコンから、その下に蜿蜒と進行する灯の行列を眺め「勝たずば生きてかえらじと」の節の楽隊をきいた。あとになって銀座へ出たら、その提灯行列のながれが、灯った提灯をふりかざしながら幾人も歩いていて、どれも背広姿・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・赤いプラカートは二階バルコンの手すりからも張りまわされている。正面には燃えるようなプラカート「第十回世界無産婦人デー万歳! レーニズムの旗の下に五ヵ年計画を四年で!」棕梠の大鉢が舞台の両端に置かれてある。 ――電化による生産手段の発達は・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ 華やかで遊惰な雰囲気のニースでバルコンある別荘に住み、恐らくはロシアからかくしてもって逃げて来た金袋を減らしながら、思い出がたりで暮していたであろうお祖母さんオリガの、嘗てあった生活の幻を注ぎこまれて、中途半端な育ちかたをしたことは、・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・幕間に、それをかりて、ああ近い近い、とよろこび叫びながら平土間の聴衆を見下したり、わざわざ平土間へそれを持って下りて、バルコンの方を見上げたりしている。 いろんないきさつがあって、やがて閉場ると、その子供は、是非日本の写真が見たいから、・・・ 宮本百合子 「時計」
出典:青空文庫