・・・かつて意識の底によどんで潜在し、ヒステリーをおこさせていたものを、みずから意識し、更にそこから苦悩の原因をとりのぞくために、きわめて現実的に、顕在的に行為する時代にはいって来ている。わたしたちの心に疼くきょうの自由についてのコンプレックスは・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・まわりでは、帝国主義の戦争ヒステリーにかかったものたちの上ずった大声がこの次の戦争には日本の人民を利用することができる、傭兵制を考えられる、とわめきたてている。日本という一つの島国がアジアに向って太平洋のはじにつらなっているという自然の現象・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・で一寸したヒステリーに関する科学的トリックを利用しつつ、ウィーンにおける親日支那青年李金成暗殺の物語を語るなかで、「支那人を捕える方法を知っていますか。それは在住支那人の数名のものを買収なさい。日本人を捕える時には、それは不可能ですが、支那・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・互に、夫は妻を強度のヒステリーと呼び、妻はその夫を性格破産者類似のものとして公表するような今日の増田氏の夫婦関係は、果して二十八年前、健全な結合におかれてあったのであろうか。今日富美子という人の行動に対して加えられるべき社会的批判があるとす・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 彼女のヒステリー、私の精神の混乱。Aや父上の忍耐の幾日かの後、到頭、私共は自分等で、別に家を持つことになった。 AはA家の戸主で、移籍が出来得ない。それならば私は、もうA家の者になったのだから、良人の家に移るのが当然であり、Aが、・・・ 宮本百合子 「小さき家の生活」
・・・ 奥さんと、女中が啀み合いの最中なのであった。 ヒステリーらしい奥さんはギスバタして痩せて居るし女中の方は苦しそうにまで肥って居る。 その二人が夢中になってやって居るのだから恐ろしいも恐ろしいが先ず可笑しさが先に立つ。 何と・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・ 一、家さがし、 一、別居生活、不なれな生活から来るヒステリー 一、作、Aの仕事、衝突、淋しい暮、祖母、 一、引越し。そのための不快。Aの父上京、Aのわるい態度、自分の往復、Aと自分との生活の不安の芽。 一、Aの・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(一)」
・・・ 奈良から鹿のハガキ カーターの魔術を見に祖母をつれてゆかれる父 八月六日 九十五度 西村さん、 自分のヒステリー的傾向。 十日にかえる。自分辛く、顔を見るのが苦痛。うまく笑えず H、A、 西村、「二三度斯う・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
・・・ 作者は姉の家に手伝っている間にも、「いろいろ焦り、自分の書けないことが、まるで姉たちの所為でもあるかのように毎日当りちらし、ヒステリーのように泣いてばかりいるのだった。」 そのような自分の焦燥の姿をも認めながら、それをひっくるめて・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・一緒に働き、遊び、男の子たちは、女の子がヒステリーを起して卒倒するのから、学生大会で、雄弁をふるうのまで見てる。男の子が、どんなに確りしてると同時に妙な奴が時々あるか、女の学生だって知ってる。 工場で一緒に働いていたものだって、ここには・・・ 宮本百合子 「ワーニカとターニャ」
出典:青空文庫