・・・哀れな姫君の寝姿がピアニシモで消えると同時に、グヮーッとスフォルザンドーで朗らかなパリの騒音を暗示する音楽が大波のようにわき上がり、スクリーンにはパリの町の全景が映出される。ここの気分の急角度の転換もよくできている。 モーリスがシャトー・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・テンポにもアダジオやアンダンテはあってもアレグロがなく、表情にもフォルチシモがなく、そうかと云ってピアニシモもなかった。 ウィンナ舞踊はそういう意味では一番「音楽的」であったかもしれない。テンポにもエキスプレションにも少なくも理論的には・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・の最後にしろ、ヘッセは、誠意をこめて辿って来た精神と肉体の葛藤の終りを、いつでも音楽で云えば弱めて消されるピアニシモの音調で結んでいる。余韻は空気のなかにのこってふるえているけれども、その余韻の快さに甘えてばかりいないで、そこにふくまれてい・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
出典:青空文庫