・・・溜息ついて、また次の一作にとりかかる。ピリオドを打ち得ず、小さいコンマの連続だけである。永遠においでおいでの、あの悪魔に、私はそろそろ食われかけていた。蟷螂の斧である。 私は二十五歳になっていた。昭和八年である。私は、このとしの三月に大・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・溜息ついて、また次の一作にとりかかる。ピリオドを打ち得ず、小さいコンマの連続だけである。永遠においでおいでの、あの悪魔に、私はそろそろ食われかけていた。蟷螂の斧である。 私は二十五歳になっていた。昭和八年である。私は、このとしの三月に大・・・ 太宰治 「東京八景」
・・・ cordial encouragement. At the same time he is deeply interested in the practical problem of long period weather predi・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・々々にして了うのは相済まん訳だ、だから、とても精神は伝える事が出来んとしても、せめて形なと、原形のまま日本へ移したら、露語を読めぬ人も幾分は原文の妙を想像する事が出来やせんか、と斯う思って、コンマも、ピリオドも、果ては字数までも原文の通りに・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・ そこで、コンマやピリオドの切り方などを研究すると、早速目に着いたのは、句を重ねて同じことを云うことである。一例を挙ぐれば、マコーレーの文章などによくある in spite of の如きはそれだ。意味から云えば、二つとか、三つとか、もし・・・ 二葉亭四迷 「余が翻訳の標準」
・・・は、作者にとって、作家生活の前半期のピリオドとなった作品である。「貧しき人々の群」から、さまざまな小道に迷いこみながら「伸子」に到達し、それから比較的滑らかにいくつかの短篇をかき、やがてそういう滑らかさの反復に作家として深い疑いを抱きだした・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・アンナの悲しい生涯の最後のピリオドまでついて行くと思う。即ち一人の女の生の過程をともにたどるわけで、一番しまいに、ああと巻を閉じたとき、やがてまたもう一遍パラパラと頁をめくりかえさずにはいられない感動が心に鳴っているとき、アンナを通して印象・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・ 働く婦人自身が結婚までとピリオドをうつ気分には、働きそのものの発展性がないこと、独立的生計が営めないこと、めいめいが特殊の技術をもっていないことなどにからんで、ブルジョア婦人雑誌の封建的な現代では、エロティックな結婚病に対するまんせい・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・ ソヴェト同盟の文学史に於て、マクシム・ゴーリキイは、例えて見れば最後の行までぴっちりと書きつめられ、ピリオドまでうたれた本の大きい一頁のような存在である。私たちは、自分たちに課せられている頁の数行をやっと書いたに過ぎない。ゴーリキイの・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ ソヴェト同盟の文学史において、マクシム・ゴーリキイは、たとえて見れば最後の行までぴっちりと書きつめられ、ピリオドのうたれている大きい本の一頁のような存在である。私たちは、自分たちの頁の数行をやっと書いたに過ぎない。ゴーリキイの生き方、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
出典:青空文庫