・・・しかし、作者とすれば、段々戦争が進行して来て野蛮なファシズムの圧力が文学を殺そうとすればするほど、人間として作家としての一生に、深い関係をもった弟の自殺前後のことやソヴェトから帰る前の心もちが、かえりみられ、書かずにいられなかった。 こ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・ 一九三二年の春からのち、日本のすべての人の生活がはげしいファシズムの笞で侵略戦争に追いこまれはじめた。侵略戦争の遂行のためにわたしたち人民の口はふさがれ、眼にカーキ色の幕がはられた。バイカル湖まではこちらで貰うというようなことがしらふ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・ 一九三三年の春、プロレタリア文化団体が壊滅させられた後、ファシズムに抗する人民戦線の問題、文学における能動精神がフランスから紹介されたが、近代の市民生活の歴史をもたず、封建保守の傾きのつよい当時の日本の作家の雰囲気の中には、いつも、こ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・山内義雄氏の翻訳で、どっさりの人に愛読されていたものであったが、ドイツのナチズムとイタリーのファシズムの真似一点ばりだった当時の日本の政府は、敵性の文学であるという理由で、それから益々興味ふかくなる第八巻からあとの出版をさせなかった。「・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・ベルリンに、日本に、売笑のあらゆる形態が生れ出ていることは、ファシズムの残忍非道な生活破壊の干潟の光景である。独善的に民族の優越性や民族文化を誇張したファシズム治下の国々が、ほかならぬその母胎である女性の性を、売淫にさらしていることはわたし・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・日本の、肉体で労働する人々、民主的作家をこめて精神で労働している人々が、一つとなって内外のファシズムと戦争に反対して立つ気風が顕著になって来ていることが、その証明である。 さて、こういうように、日本の社会史の上でも画期的な規模と深さとを・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・所得税の問題、物価問題、人種問題などを漠然ととりあげていたトルーマンは、今やタフト・ハートレー法の非民主性について演説し、世界ファシズムに反対し、強国間の協力の可能について言及しなければならなくなった。ウォーレスの政策の一部をトルーマンの演・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・この時期は日本のおそるべきファシズムの時代であった。この時代の後半にジャーナリズムに通用した作品は、決して率直にファシズムと戦争に対して抵抗を示すことができなかった。この目次では戦争協力と超国家主義の作家たちが登場していないとともに、こんに・・・ 宮本百合子 「「現代日本小説大系」刊行委員会への希望」
・・・新聞は、それをナチズムとファシズムの完全な敗北という見出しで伝えた。世紀のよろこび、幸福、美と詩との本質は、その歓呼のうちにききとられたと思う。一言につづめていえば、私たちのこの世紀こそは、大衆とその理性の勝利、民主の世紀であることが、心か・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 太宰治の死に際して、受動的な形であらわれた民主的批評の実質についての危機は、つづいて一昨年の初夏、多くの文学者が、反ファシズムと戦争反対の要求にたって民主的陣営との統一的な動きにすすんで来てから、今日にまでの民主的批評家の活動にあらわ・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
出典:青空文庫