・・・眼をつぶるとさまざまの花が、プランクトンが、バクテリヤが、稲妻が、くるくる眼蓋の裏で燃えている。トラホオムかも知れない。髪に用捨もなき事やといえば、吉三郎せつなく、わたくしは十六になりますといえば、お七わたくしも十六になりますといえば、吉三・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・たとえば水晶で作られたようなプランクトンがスクリーンいっぱいに活動しているのを見る時には、われわれの月並みの宇宙観は急に戸惑いをし始め、独断的な身勝手イデオロギーの土台石がぐらつき始めるような気がするであろう。不幸にしてこういう映画の、こと・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・それはある会合の席でプランクトンの調査に関する講演を聞いた時、「今回のわれわれの調査はまだ単に量的であって質的の点までは進んでいない」という言葉を聞いて愕然として驚いたのであった。物理学者にはいつでも最初が質的で次に量的が来るのに、ここでは・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
出典:青空文庫