去る四月一日の『大学新聞』に逸見重雄氏が「野呂栄太郎の追憶」という長い文章を発表した。マルクス主義を深く理解している者としての筆致で、野呂栄太郎の伝記が細かに書かれ、最後は野呂栄太郎がスパイに売られて逮捕され、品川署の留置・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・ 情緒の昂揚に全身をまかせ、詩について音楽について、憧憬ている旅の楽しさについて物語る時、マルクス主義の立場で経済論を書くローザはいつともなく黙祷だの、美しさだの、神秘だのの感情に溺れている。雲の綺麗さに恍惚として彼女は「こんな色や、こ・・・ 宮本百合子 「生活の道より」
・・・以上のような安価な見透しに立って、インテリゲンチア作家たちは、つまりマルクス主義のこちら側で、自己をうちたてよう、強い自己を文学の上にうちたてて右からの波、左からの吸引に対し、高邁に己れ一人を持そうとしていると観察されるのである。純文学家が・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・が書かれるにおよんで、彼は人道主義者からマルクス主義者として立ち現れた。この時分、同志小林はすでに階級闘争の実践に参加し、組合に活動し、日本プロレタリア芸術連盟に活動していたのである。 以来、「蟹工船」「不在地主」「工場細胞」「オルグ」・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・「我々マルクス主義者の云うリアリズムをはき違えて、あたかもそれが十九世紀後半の写実主義と同一のものであるかの如く考える人々があるが、それは誤解の甚しきものである」と。 バルザックの氾濫的な芸術作品の中に如何なる大きい矛盾があったればこそ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・社会的現実と個人との関係に於て、環境が人間を作るとだけ一面から観る態度を、若しそれがマルクス主義的な観方の応用であるというならば、誤りも甚しいものなのではなかろうか。環境は人間を作る。しかし人間はまた環境を自分から作ってゆくものである。生活・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・ プレハーノフの女弟子、ソヴェト同盟のマルクス主義機械論的修正派の最も有名な代表者アクセリロードは、「トルストイの創作を批評するのにもスピノザの哲学を分析する際にも、彼女は永久不変の道徳法から出発している。彼女は、新カント派と多くの・・・ 宮本百合子 「婦人作家は何故道徳家か? そして何故男の美が描けぬか?」
・・・ヨーロッパにくらべると二十年余もおくれてイデオロギー的に大衆化するや直に複雑多岐な暴力にさらされなければならなくなった日本の若いマルクス主義の活動家たちと、転向の問題とは骨肉的な関係で結ばれていると思う。運動が合法的擡頭をした時代に階級的移・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・レーニンが指導するボルシェヴィキと修正派ボグダーノフとがマルクス主義哲学について大論争を行っていた当時、プロレタリアの世界観をわがものにしていない「マルクス主義者に近いもの」であったゴーリキイははなはだしく動揺して、ボグダーノフと雑誌を出し・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・一八八〇年代というときは、又ロシアに最初のマルクス主義団体が生れ、マルクスの「資本論」が翻訳されていた。ヴェラ・ザスリッチのような歴史的な業績をもつ婦人もある。マリア自身、いかにもロシアの女らしいゆたかな生活力と天質に燃えながら、しかも同時・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
出典:青空文庫