・・・これは去年病中に『水滸伝』を読んだ時に、望見前面、満目蘆花、一派大江、滔々滾々、正来潯陽江辺、只聴得背後喊叫、火把乱明、吹風胡哨将来、という景色が面白いと感じて、こんな景色が俳句になったら面白かろうと思うた事があるので、川の景色の聯想から、・・・ 正岡子規 「句合の月」
・・・ある一派の倫理学者の如く行為の結果を以て善悪の標準とする者はお七を大悪人とも呼ぶであろう。この、無垢清浄、玉のようなお七を大悪人と呼ぶ馬鹿もあるであろう。けれどお七の心の中には賢もなく愚もなく善もなく悪もなく人間もなく世間もなく天地万象もな・・・ 正岡子規 「恋」
・・・先に其角一派が苦辛して失敗に終りし事業は蕪村によって容易に成就せられたり。衆人の攻撃も慮るところにあらず、美は簡単なりという古来の標準も棄てて顧みず、卓然として複雑的美を成したる蕪村の功は没すべからず。 芭蕉の句はことごとく簡単なり。強・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・絵具商のタンギイ爺さんというのがセザンヌ一派を熱愛して、たまにセザンヌの絵を求めてくる人があると、画室へ自分が案内して選ばせたのだそうですが、その画室には、一枚のキャンバスに小さいモティブの絵がいくつか別々に描かれていて、貧しい愛好家は一ル・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・と田村の独善的な自己肯定にふれるならば、田村泰次郎一派の人々のいくらか文壇たぬき御殿めいた生きかたそのものや、そのことにおいていわれている文学的意図は、はったりに堕している事実や一方で彼がファシズムに反対し平和を守る側に立っていることでは大・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 一人一派的な文学上の独創性を求めて、同人雑誌によるとしても、徒労であるにすぎない。何故なら、こんにちわたしたちにとって最も重要なのは、戦後五年間の日本で、誰の目にもおおいがたくすりかえられて来た反民主的な諸力に対して、わたしたちの生活・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・この微妙な無理は、報告の冒頭の「勤労者文学を民主主義文学のうちの一派とみる傾向」云々をふくむ大まかな一章のうちにも感じとれるし「足ぶみ状態と第二段階」の、かみわけて云われている勤労者の「意識的努力・観念的たかまり」についての部分などにも、云・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・そのゴーリキイが、ソヴェト人民の建設をさまたげようと企んだトロツキー一派の反革命派のために毒殺されたのは一九三三年でした。ゴーリキイはそのとき六十五歳でした。 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイについて」
・・・いつでも「木村先生一派の風俗壊乱」という詞が使ってある。中にも西洋の誰やらの脚本をある劇場で興行するのに、木村の訳本を使った時にこのお極りの悪口が書いてあった。それがどんな脚本かと云うと、censure の可笑しい程厳しいウィインやベルリン・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ある人がかつて俳諧は普遍の徳があるとか云ったが、子規の一派の永く活動しているのは、この普遍の徳にでも基いて居るものであろう。予が主筆のために説かんと約した鴎外漁史の事は此に終る。しかし予は主筆に、予をして猶暫く語らしめん事を願う。想うにこの・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
出典:青空文庫