・・・それから支那人が書いた本では、大清一統志、燕都遊覧志、長安客話、帝京――編輯者 いや、もう本の名は沢山です。小説家 まだ西洋人が書いた本は、一冊も云わなかったと思いますが、――編輯者 西洋人の書いた支那の本なぞには、どうせ碌な物・・・ 芥川竜之介 「奇遇」
・・・…… 遠山の桜に髣髴たる色であるから、花の盛には相違ないが、野山にも、公園にも、数の植わった邸町にも、土地一統が、桜の名所として知った場所に、その方角に当っては、一所として空に映るまで花の多い処はない。……霞の滝、かくれ沼、浮城、もの語・・・ 泉鏡花 「瓜の涙」
・・・――これは鎮守様へ参詣は、奈良井宿一統への礼儀挨拶というお心だったようでございます。 無事に、まずお帰りなすって、夕飯の時、お膳で一口あがりました。――旦那の前でございますが、板前へと、御丁寧にお心づけを下すったものでございますから私…・・・ 泉鏡花 「眉かくしの霊」
・・・我封建の時代に諸藩の相互に競争して士気を養うたるもこの主義に由り、封建すでに廃して一統の大日本帝国と為り、さらに眼界を広くして文明世界に独立の体面を張らんとするもこの主義に由らざるべからず。 故に人間社会の事物今日の風にてあらん限りは、・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・ この兼良が晩年に将軍義尚のために書いた『文明一統記』や『樵談治要』などは、相当に広く流布して、一般に武士の間で読まれたもののように思われるが、その内容は北畠親房などと同じような正直・慈悲の政治理想を説いたものである。この思想は正義と仁・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫