・・・もしこの次にこの種の労作が期待されるのであったら、一読者の希望として、東洋をありきたりの東洋篇に分けず、東西相照し合う立体的関係に於て、この社会運動思想史の裡に綯いまぜて、東洋の断面をも示されたら、さぞ愉快であろうと思う。 更に、この著・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・それだからこそ私たちは、一読「こがねを打ちのべたような」彼の芸術の世界の感性、象徴にひき入れられ、一句一句がそれぞれに「底をぬいて」いること、すなわち夾雑観念のないそのものとしての境地にふれている純一を感じ、対象と作者の感覚の「間に髪を入れ・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・ 純文学的の立場からではなくその小説を一読した女性の一人として、大体の筋の紹介と、簡単な感想を述べたいと思います。 ロザリーは、英国のイボッツフィールドの教区長の末娘に生れました。 父親は、ケムブリッジ大学を卒業し、ひとから未来・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・たとえば昭和十四年度の日本文学の総決算を一読した人々は、そこに本年度の特徴として、婦人作家の活動という一項があったことに注目されたろうと思う。とにかく明治以来の文学史であまり前例のない数の婦人作家たちが文壇に作品を送りその評価を問うたのであ・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・に、この一月座談会記事が連載されていた間の或る日「てんぼうだい」に一読者よりとしての投書でのせられていた。「前略、万葉古義を拵えることも勿論立派な仕事と思いますが、而し民衆はそういうものよりも、もっと生活に喰いこんだものを求めているのではな・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・の作者が、その真率でたゆみない天質によって、社会現象に対しては常にまともから相応ずる生き方で、今日までを打ち貫いて来ていることは、作品を一読して、その基調を明かに感じるのである。それでいながら、この作者には、口を開いてそのような経験を語ると・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・ファウストの場合では佐佐木信綱さんが好意を以て一読して下さることになった。そこで私と佐佐木さんとの心附いた限が正誤表に上ったり、また象嵌で直されたりすることになる。その外特にある箇条に関して教を受けて正誤した事もある。その一例は第一部でグレ・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫