・・・身心流暢して苦学もまた楽しく、したがって教えしたがって学び、学業の上達すること、世人の望外に出ず。その得、三なり。一、古来、封建世禄の風、我が邦に行われ、上下の情、相通ぜざること久し。ひとり私塾においては、遠近の人相集り、その交際ただ読・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ ある人云く、父母の至情、誰かその子の上達を好まざる者あらんや、その人物たらんを欲し、その学者たらんを願い、終に事実において然らざるは、父母のこれを欲せざるにあらず、他に千種万状の事情ありて、これに妨げらるればなり、故に子を教育するの一・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・これを吸煙の上達と称し、世人の実験においてあまねく知るところなり。ひとしく同一の煙草にして、はじめはこれを喫して美なりしもの、今はかえって口に不快を覚えしむ。然らばすなわちこの麁葉は、最初に美を呈したるに非ず、ただ我が当時の口にてこれを美と・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・ この学校は中学の内にてもっとも新なるものなれば、今日の有様にて生徒の学芸いまだ上達せしにはあらざれども、その温和柔順の天稟をもって朝夕英国の教師に親炙し、その学芸を伝習し、その言行を聞見し、愚痴固陋の旧習を脱して独立自主の気風に浸潤す・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・独見もでき、翻訳もでき、教授もでき、次第に学問の上達するにしたがい、次第に学問は六ッかしくなるものにて、真に成学したる者とては、慶応義塾中一人もなし。恐らくば、日本国中にも洋学すでに成れりという人物はあるまじく、ただ深浅の別あるのみ。・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
・・・些細な日常の感情軋轢を整理することをおのずから学ぶであろうし、その点では、仕事そのものの上達につれて二重の賢さ、生活術を会得してゆくわけになります。この事は実際上、良人や子供の理解なしにはなりたたないから、好都合な事情で運べば、よい妻、いい・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・あちこちの新聞雑誌でそのことにふれられていたけれど、その声がどのような形で上達したのかはわからない。 日本じゅうに婦人で戸主であるひとの数はどの位だろう。 二十五歳という年を中心にして有職者を見くらべると男二百四十万人ばかりに対して・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・稽古事やスポーツは、上達だけが目的ではなくて、それを愉しくやっているというそのことのなかに本当の愉しさが在るのだという、生活を立体的にたのしむ術も、身につけられようとしている。 勤勉な日本の女性たちは、頭と体とを強壮にして、独特に複雑な・・・ 宮本百合子 「働く婦人の歌声」
出典:青空文庫