・・・もしかりに、漠然と公安を乱すおそれがある出版物はとりしまるというような新取締法をつくったならば、政府はよろこび勇んで、政府を批判し彼らの良心を眼覚めさすすべての出版物を禁止しはじめるであろう。情報局が戦時中すべての戦争反対の言論を禁止したよ・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・互に為すべきことを明に弁え、正しく賢く着々と生活を運転させることが彼等の理想であって、理由のない遠慮で仕事も遅らせたり、過度な感情に沈湎して頭を乱すようなことは、見識のない無知として斥けずにはいられないことなのです。 生きた例として、私・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・いい一つのことをするには悪いことと闘っていかなければならないとおり、平和を守る場合には、必ず、平和を乱すあらゆる条件に対して、はっきりとその本質を見きわめ、理性的に聰明につよく闘っていかなければ平和は守れない。 文学的創作は一つの社会的・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・彼の職務は或る作品がいかなる芸術的価値を持つかを定めることではなく、ただそれが公開される場合に公衆に対していかなる影響を及ぼすかを精確に判定し、その影響が社会の秩序を紊乱し善良な風俗を壊乱するようなものであった場合に、その公開を禁止すること・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・肉の執着といい生命虚栄の執着という、すべて人生を乱す魔道である。数億の人類が数億の眼を白うして睨み合う。睨み合う果てに噛み合いを初める。この地獄に似る混沌海の波を縫うて走る一道の光明は「道徳」である。吾人はここにおいて現代の道徳に眼を向ける・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫