・・・ 劇の第一幕から終りまで、二つの型の対立的争闘が描かれてあるだけで、卓抜で精力的なコムソモールは、反動傾向の中にまじっている浮動的な分子を正しい建設に協力させ獲得するために組織的努力をすることも見落されているし、推移する工場内の情勢がお・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 此頃は殆ど毎日のように問題となって居る黒白人種の争闘は、心を苦しめます。今度の大戦で、欧州に出征した黒人は、楽しんで還った故国に非常な失望と、憤懣とを感じて居りますでしょう。独逸人は不正な、人類、人道主義の敵であるから殺せと命じられて・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・スペインのこんにちの燃え立つ階級間の争闘を、柳沢健氏が、その民族の持っている一本気で純朴で誠実な徳性によって、惨虐性にまで進められてあるのだと説明していることだけにあきたりないと同じように。思想的・文学的な内容において情熱という言葉が日本に・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・苦しい時だけ、争闘の必要が起った時だけ、急に工場でかたまるんじゃない。ふだんから、機会ある毎に楽しむ時にも男も女も集団的にかたまって、階級としての団結力の強化をはかってる。 ――然し、ソヴェトは建設期だろ。階級としての富農や成金に対して・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・ しかしこれから生い立ってゆく子供の元気は盛んなもので、ただおばあ様のおみやげが乏しくなったばかりでなく、おっか様のふきげんになったのにも、ほどなく慣れて、格別しおれた様子もなく、相変わらず小さい争闘と小さい和睦との刻々に交代する、にぎ・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・ 直ぐに己の目に附いた「パアシイ族の血腥き争闘」という標題の記事は、かなり客観的に書いたものであった。 * * * パアシイ族の少壮者は外国語を教えられているので、段々西洋・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・これらの言葉は本来は争闘の技術を言い現わしていたのであるが、そこに「心構え」が問題とされるようになると、明白に道徳的な意味に転化して来る。そうしてそこで中心的な地位を占めるのは、自敬の念なのである。おのれが臆病であることは、おのれ自身におい・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・階級が特に多くの犠牲を払わなくては、万民志を遂ぐる境に達しがたいことも事実である。そうしてその犠牲を払うことが聖旨を奉戴し忠良な臣民となるゆえんである。階級争闘が必然であるように見えるのは不忠な政治家や不忠な資本家などがいるからであって、す・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・しかしすべての争闘は結局雄大な調和の内に融け込んでいる。それは相戦う力が完全な権衡に達した時の崇高な静寂である。尽くることなき力を人の心に暗示する深い沈黙である。そうして、この簡素な太い力の間を縫う細やかな曲線と色との豊富微妙な伴奏は、荘厳・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・ 自分の内には、永い間、押えつけているものと押えつけられている者との間の争闘があった。苦痛が絶えず心を噛んでいた。この苦痛は主我の思想によって転機に逢会するまで常に心を刺していたのであるが、転機とともに一時姿を隠した。自分はそれによって・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫