・・・九代目X十郎と十一代目X十郎との勧進帳を聞く事も可能であり、同じY五郎の、若い時と晩年との二役を対峙させることも不可能ではなくなる。 もしまた、いろいろな自然の雑音を忠実に記録し放送することができる日が来れば、ほんとうに芸術的な音的モン・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・ そうだっとみんなもおもったとき、にわかにうしろのほうで五郎が、「わあ、痛いぢゃあ。」と叫びました。 みんなそっちへ振り向きますと、五郎が耕助に足のゆびをふまれて、まるでおこって耕助をなぐりつけていたのです。すると耕助もおこって・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
羽仁五郎氏は、この真心を傾けて執筆された独特な伝記を、有名なダヴィテの像に今日見ることの出来るミケルアンジェロの不滅の生命から語りはじめていられる。「ミケルアンジェロは、いま、生きている。うたがうひとは『ダヴィテ』を見よ。・・・ 宮本百合子 「現代の心をこめて」
・・・の車善六という人物の出現、伊藤整氏の得能五郎の存在、徳永直氏の一田福次の存在にふれておられた。 一つの着眼であると思われたが、作家は何の力によって成長展開するかという前途多難な課題の内からみると、あの三通りのそれぞれ一風変った名の持主た・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ 作家では山本有三氏、歴史家では羽仁五郎氏などが、文化に対する良心から、自身の著作に漢字の制限と仮名使いの単純化を実行して居られる。作家、評論家などの間に比較的この技術上の関心がひろがって行かないのは、それらの人々が自分たちの職業的な習・・・ 宮本百合子 「今日の文章」
・・・辰野 だから、曾我廼家五郎が必要なのだ。どうも軽いアイロニィは解りませんね。ここで笑えと云ってやるサクラが必要なのだ。民衆というものはそういうことを云ってやらないとね、反対に解釈されてはちょっと困るからね。 これら三人の、フランス文・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ * 面白い本と云えば、羽仁五郎『ミケルアンジェロ』小倉金之助さんの、『家計の数学』山の好きな方に、チンダル『アルプスの旅より』又は『アルプスの氷河』など興味あるでしょうし、女の活動面が新しく展かれてゆく一つ・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・村松五郎氏「幽霊ファッショ論」がその一つである。日本に純粋な資本主義独裁はないから、従ってファッシズムもない、という主張をもった社会時評である。他の一つは「プロレタリア文化戦線の見透し」北厳二郎氏である。限られた枚数の中で、詳細にふれること・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ ある一つの綜合雑誌の目次を見たら、論説に羽仁五郎、細川嘉六、信夫清三郎、平野義太郎という人々が並んでいるのです。その同じ雑誌にどういう小説家が並んでいるかといえば、永井龍男その他丹羽文雄という工合です。今日の文学が評論界、思想界との間・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・熱田五郎氏の感想がひかれて、若い人たちは、「自己一身のうちに労働者的な集団生活と小市民的な個人生活との二重性をはっきりみとめ」「党生活と私生活との二重性の」「統一を一作家の資格においてなしとげたいと希っている。」その当然の希望は、政治生活を・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
出典:青空文庫