・・・最後のペテルスブルグ生活は到着早々病臥して碌々見物もしなかったらしいが、仮に健康でユルユル観光もし名士との往来交歓もしたとしても二葉亭は果して満足して得意であったろう乎。二葉亭は以前から露西亜を礼讃していたのではなかった。来て見れば予期以上・・・ 内田魯庵 「二葉亭追録」
・・・ 近くて湯のある中棚は皆なの交歓に適した場所だった。子安がいくらか土地に馴染んだ頃、高瀬も誘われて塾から直ぐに中棚の方へ歩いて行って見た。子安が東京から来て一月ばかり経つ時分には藤の花などが高い崖から垂下って咲いていた谷間が、早や木の葉・・・ 島崎藤村 「岩石の間」
・・・しかも、たっぷり半日、親友交歓をしたのである。私には、強姦という極端な言葉さえ思い浮んだ。 けれども、まだまだこれでおしまいでは無かったのである。さらに有終の美一点が附加せられた。まことに痛快とも、小気味よしとも言わんかた無い男であった・・・ 太宰治 「親友交歓」
・・・を選んだほうが、それだって決して結構なものではないが、むしろそのほうに住んでいたほうが、気楽だと思われるから、敢えて親友交歓を行わないだけのことなのである。 それでまた「徒党」について少し言ってみたいが、私にとって最も苦痛なのは、「・・・ 太宰治 「徒党について」
・・・サラリーマンから、再び、人民の声を反映し、同時に木鐸たる記者に、自身の本質をとり戻すジャーナリストたちの新しい希望と、それに対する数千万の人々の期待は、互に苦しい時代を経ているだけに、決して表面の交歓ではないと信じている。〔一九四五年十・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・六月三日は動物愛護デーというので外国から来ている貴婦人たちが天皇の子息である少年を左右から囲んで「なごやかな交歓」をした写真が二面に出ている。その一面には三十一日来四十時間のとりしらべののち五年、七年、十年と重労働刑を判決申しわたされた八人・・・ 宮本百合子 「動物愛護デー」
・・・『文芸』や『星座』が試みはじめたつつましやかな民衆の文化交驩の機会が、どうかまたすみやかに恢復されることを願っている。 女の作品 三篇に現われた異なる思想性 中本たか子氏は数年来、非常・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・アメリカと交歓ラジオ放送が行われている今日東北の農民は床の張ってない小屋に家畜とすんで地べたに藁をしいて生活している。徳川時代でも、地べた以下のところで生きていたのではないであろう。日本の農民生活は、原始的な状態のまま搾られとおして、今日こ・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
出典:青空文庫