・・・それだけにまた娘の、世馴れて、人見知りをしない様子は、以下の挙動で追々に知れようと思う。 ちょうどいい。帰省者も故郷へ錦ではない。よって件の古外套で、映画の台本や、仕入ものの大衆向で、どうにか世渡りをしているのであるから。「陽気も陽・・・ 泉鏡花 「古狢」
・・・また頭が悪いせいか、人見知りをしないたちなので、おかみさんにも笑いかけたりして、私がおかみさんのかわりに、おかみさんの家の配給物をとりに行ってあげている留守にも、おかみさんからアメリカの罐詰の殻を、おもちゃ代りにもらって、それを叩いたりころ・・・ 太宰治 「ヴィヨンの妻」
・・・園子も、懸念していたほど人見知りはせず、誰にでも笑いかけていた。みんな控えの間の、火鉢のまわりに集って、ひそひそ小声で話をはじめて、少しずつ緊張もときほぐれて行った。「こんどは、ゆっくりして行くんでしょう?」「さあ、どうだか。去年の・・・ 太宰治 「故郷」
出典:青空文庫