・・・などのような特異性は附随していない、獄内の日常些事の中にさえ掴みゆくものであることを、語ろうとしていると思う。「風雲」において、作者は、従来階級人の獄中生活を描いた作品が、多かれ少なかれ、からみつかれていたロマンティシズムを払いのけて、・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・するという興味ある形で今日とりあげられている青年男女の体格低下の問題や、婦人労働者の退職手当金の問題、又頻々たる心中事件の意味など、恋愛論が、恋愛論の枠の中を廻っていただけでは解決し得ぬ先行的事情が、附随してとりあげられなければ、実際性は稀・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
・・・ヒューマニズムの理論的闡明に附随している不便や現実の展開の局限などから生じた停滞が、この傾向を助長させているのであろうし、又限界をひろくして観察すれば、そういう傾向にいつしか導き込む安易さが昨年あたりからヒューマニズム提案がなされた初期から・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
出典:青空文庫