・・・十七世紀の人々がそこに文化の中心を置いて生活していたサロンと、その時代の社交界の人々が「優美な代数式を語るような」順序や語源や、比喩の釣合いに絶えず制御されていた分析的な考え方等は、バルザックが生きて、愛し、苦しんで、金銭のために焦慮しつづ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・一間に一間半もある大ペチカのある病院の台所の隅で ターニャは代数の方程式を書くのだ。――お湯ぬるくありませんか――丁度いい 一寸黙って居たがターニャは愉しそうに伸びをして、両腕を頭の後に組み乍ら云った――もうじき私、休みを貰・・・ 宮本百合子 「無題(七)」
・・・ 物理の段々教室は陰気で埃っぽかったが、化学よりは面白く思われた。 代数は今の女学生にとってどの位興味ある課目となっているのだろうか。三年生のとき、丁度女の子の感情が動揺し敏感になっている頂上の時に代数がはじまる。トルストイの「戦争・・・ 宮本百合子 「私の科学知識」
出典:青空文庫