・・・ 電火の驚くべき器械的効果は、きわめて微細なる粒子が物質間の空隙を大なる速度で突進するによるとの考えは、近年のドルセーの電撃の仮説に似ている。またここのルクレチウスの記述には、今の電子を思わせるある物もある。電火によって金属の熔融するの・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・ 以上ははなはだ未熟な分析の試みであったが、このような見方を一つの作業仮説として実際の古人の連句中の代表的なものに応用してみることは、連句の研究上に一つの新断面を劈開するだけの効果はありはしないかと思われる。ここで実例について詳説するこ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ この仮説が確かめられる時は、自分の神経の弱さ、腹の弱さ、臆病さの確かめられる時であるというのはきわまりなく不愉快な恥ずかしい事である。しかし同時にその弱さの素因がいくらか科学的につきとめられて従ってその療法の見当がつくとすれば、それは・・・ 寺田寅彦 「笑い」
・・・この次この人の『科学と仮説』を入れましょう。こちらの訳をしたひとは平林氏ではないから文体も違っているでしょう。私はこの偉い人の『科学の価値』という本の手ずれた表紙を常に親愛をもって眺めていたが、それはその手垢に対する主観的親愛に止っていたの・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫