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・・・――第一に、その年三月中旬、品川伊佐羅子の上屋敷が、火事で焼けた。これは、邸内に妙見大菩薩があって、その神前の水吹石と云う石が、火災のある毎に水を吹くので、未嘗、焼けたと云う事のない屋敷である。第二に、五月上旬、門へ打つ守り札を、魚籃の愛染・・・
芥川竜之介
「忠義」
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・・・「一郎、一郎、いるが。一郎。」 また明るくなりました。草がみないっせいによろこびの息をします。「伊佐戸の町の、電気工夫の童あ、山男に手足いしばらえてたふだ。」といつかだれかの話した言葉が、はっきり耳に聞こえて来ます。 そして・・・
宮沢賢治
「風の又三郎」