・・・ 人殺し、人殺の大罪人……それは何奴? ああ情ない、此おれだ! そうそう、おれが従軍しようと思立った時、母もマリヤも止めはしなかったが、泣いたっけ。何がさて空想で眩んでいた此方の眼にその泪が這入るものか、おれの心一ツで親女房に憂目を・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・それを聞く嬉しさ、身も浮くばかりに思う傍から、何奴かがそれを打ち消す、平田はいよいよ出発したがと、信切な西宮がいつか自分と差向いになッて慰めてくれる。音信も出来ないはずの音信が来て、初めから終いまで自分を思ッてくれることが書いてあッて、必ず・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
出典:青空文庫