・・・でも既に事実上の海水浴が保健の一法として広く民間に行われていたことがこれで分るのである。 明治二十六、七年頃自分の中学時代にはそろそろ「海水浴」というものが郷里の田舎でも流行り出していたように思われる。いちばん最初のいわゆる「海水浴」に・・・ 寺田寅彦 「海水浴」
・・・国民消費としてひっくるめていえば、人口には女も入って、女の酒、女の煙草も、これまで内務省や文部省が保健と精神規律の上からそれを眺めていたとは異った角度でながめられようというのであろうか。 銃後の婦人に求められている緊張、活動とその性質と・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・もしまた、適度の砂糖は人間の健康に必要なものであるから、というのならば、つい先頃まで砂糖の害だけを云いたてて、科学的に国民保健上最低の糖分の必要さえ示そうとしなかった政府と栄養専門家、医者たちの軍事的御用根性について、この際正直に反省してほ・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・何故なら、勤労婦人の現実の生活を身軽に、幸福にする各区の無料病院、託児所、診療所、母子健康相談所、共同食堂の経営などは、みんな市ソヴェトの保健部の仕事と関係があります。 ソヴェト政権は、勤労婦人に出産前後四ヵ月の給料つき休暇と、月給の半・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
・・・ 革命後、ソヴェト同盟の保健省は工場、農村の勤労者たちをいい家に住まわせようと、大努力をやっている。共同住宅建築組合に補助金を出してドシドシ労働者住宅を建てているばかりか、新しく出来る大工場には、必ず附属の新式な住宅がある。 モスク・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・ソヴェトの保健省は全国民を無料で医療させるということを目標にしている。農村の方の衛生準備はどうしても遅れていて、今度五ヵ年計画で診療所を非常に殖やすということで、医者を地方に派遣する新しい規定とか、いろいろなそういうものを制定している。・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・その頃でさえ、全露作家協会の共同金庫は、生活に余裕ない作家の生活援助のために保健費を出したり、原稿料の一部の前借を計らったり、消費組合をもって燃料、織物などの共同購入の便宜を計らっていた。一九三〇年頃には便利な食堂も出来ていた。ノビコフ・プ・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・体位向上徒歩奨励、幼児保健の問題、戦没者の母子寮の設立などと全く背までくっついていて離れられない双生児の歩む姿である。 風俗の心理というものは、このどちらかの一方にだけ範囲を限ってそれぞれのものがあるのではなくて、日常生活における二つの・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・第三回目の分に保健婦である婦人の手記があったと思います。それから告白など。悪戦苦闘手記にかたよらず、人はいろいろむずかしさを通して、人間らしくどう生きるかということをひろいところから考えに訴えるように。一、「きけわだつみのこえ」に「読み・・・ 宮本百合子 「「未亡人の手記」選後評」
・・・先ず陸軍大臣が保健省設立を提案するという興味ある形で今日とりあげられている青年男女の体格低下の問題や、婦人労働者の退職手当金の問題、又頻々たる心中事件の意味など、恋愛論が、恋愛論の枠の中を廻っていただけでは解決し得ぬ先行的事情が、附随してと・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
出典:青空文庫