・・・ 十八等官でしたから役所のなかでも、ずうっと下の方でしたし俸給もほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。殊にそのころ、モリーオ市では競馬場を植物園に拵え直・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・云わば、芸術労働者の俸給も、ソヴェトではパンと同じに国定相場で支払われているわけだ。 ――じゃ勿論、最低賃銀というものも、はっきり規定されてるわけだね。悪くないな……それで、大体どの位の収入があるんだ? ――話したね、さっき。――各・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・こんな永年、経済の上では成り立ちようもない俸給で司書の仕事をしつづけて来ているのだから、この人の三十年の生計は平安であり、寧ろゆとりがあるものかもしれない。そうだとしても、三十年という時間は人生における何かである。そして、この人は三十年間一・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・ ところで、若し、あなたが俸給生活者であり、又は工場労働者で、毎日職場でブルジョア産業合理化による首きりの不安と、安い労働賃銀の苦しみにさらされている時、この説法をきいて成程、とどうして思うことが出来るでしょう。現代反動政府とそれを支配・・・ 宮本百合子 「反宗教運動とは?」
・・・その上、最低四五〇円とされたことは、まだまだ一般俸給生活者がそれだけの給料をとっていないという事実を示していることである。最高現金で五〇〇円という指示は、最低を現金で四五〇円厳守と規定した上でのことなのだろうか。その点について、政府は一言の・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・きょう、やかましい産児制限のことも、こうして、住む家をもたず、家事負担から解放されない若夫婦が、初々しい親となってゆく喜びさえ節約して、食べられない俸給に耐えてゆくための一条件のようでさえある。今日、産児制限は、優生学の立場からというよりは・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫