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・・・誰もおまえを憎んでいない。偽悪趣味。」「甘い?」「ああ、このお宮の石碑みたい。」路傍に、金色夜叉の石碑が立っている。「僕、いちばん単純なことを言おうか。K、まじめな話だよ。いいかい? 僕を、――」「よして! わかっているわよ・・・
太宰治
「秋風記」
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・・・愛情の深すぎる人に有りがちな偽悪趣味。わざと、あくどい鬼の面をかぶって、それでかえって作品を弱くしている。けれども、この東綺譚には、寂しさのある動かない強さが在る。私は、好きだ。 お風呂がわいた。お風呂場に電燈をつけて、着物を脱ぎ、窓を・・・
太宰治
「女生徒」