・・・もし欧羅巴だったら小説家としても相応に優遇され、二葉亭もまた文人たるを甘んずる事が出来たであろう。 内田魯庵 「二葉亭追録」
・・・ 鎌倉幕府の要路者は日蓮への畏怖と、敬愛の情とをようやくに感じはじめたので、彼を威迫することをやめて、優遇によって懐柔しようと考えるようになった。そして「今日以後永く他宗折伏を停めるならば、城西に愛染堂を建て、荘田千町を付けて衣鉢の資に・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・合わせて相生の松ソレと突きやったる出雲殿の代理心得、間、髪を容れざる働きに俊雄君閣下初めて天に昇るを得て小春がその歳暮裾曳く弘め、用度をここに仰ぎたてまつれば上げ下げならぬ大吉が二挺三味線つれてその節優遇の意を昭らかにせられたり おしゅ・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・ ヘルマン教授には三学期通じてずっと世話になって特別の優遇を受けたような気がしていた。二十余年の今日でもこの先生の顔をありあり思い出すことが出来てなつかしい。 ヘルマンの教室を出て右を見ると河向いにウィルヘルム一世記念碑のうしろの胸・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・っていう二種類の称号を与えて優遇しているのを。モスクワの劇団にだけでも「人民芸術家」が十一人ばかりいる。「功績ある芸術家」は四十人以上ある。 例えばモスクワ芸術座のルージュスキーなんか、役柄は西洋の松助みたいなところだが、革命前、アル・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・正当以上――過度に、尊敬、優遇されることは却って一種の屈辱であることを、真実な若者なら知っています。 それは、工場に通う女工のような者の中の幾部分や、小僧の幾部分かは、互の遊戯的気分から、わざわざ人中で靴の紐を結ばせ、結ぶような衒いをし・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫