・・・世界文学は、プロレタリア文学運動が文学作品の価値評価を主観的な内在的な評価のよりどころから解放して、もっと客観的な社会的な外在的なものにしたことではじめて本質的飛躍をとげました。日本では、この文芸批評の正当な伝統が戦争によっておそろしく中断・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・シルレルは、バルザックの芸術についてエンゲルスの言ったリアリズムとは、「資本主義的発展の内在的矛盾を――それが一般にブルジョア的創作方法に可能である限りにおいて、というのは、ブルジョア的リアリズムは究極において観念的なものになるからだ――解・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・其人の圏境、その人の持って生れて来たに違いない内在力などが、明に頭に考えられるより先に、自他を混同した我等の不安、混迷になってしまうのである。 人は、忽ちその一事実の上に絶対価値批判を組立てようとする。或る概論の実証とし、また反証としよ・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・ 奉天にパチパチの起ったことについて日本帝国主義に内在する経済的・政治的理由も眼中に入れていない。彼は無智な軍用ペンをふるって、ブルジョア異国趣味から狂気的民族主義へ飛躍しているのだ。 この実例だけでも、ブルジョア文学の領域内で、異・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・が作家との間にもっている内在的関係も云わば複雑怪奇ならざるを得ない点もある。若しその内在的なものを肯定するとすれば、そのように人生的な意味では既に現代らしくディフォーメイションしたものとしてあらわれている「嫌な奴」の存在を、文学として、即ち・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
・・・一人一人の批評する人が、てんでのうけとりかたばかりに立って、内在的な心理や感受性にしたがって感想をのべ、注文するのであったから。 プロレタリア文学運動の初期に、平林初之輔によって外在批評の提唱がされ、だんだん客観的・科学的な評価の基準が・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・彼らに内在するあらゆる自然発生的中流的素質は、老大国の首府に暮すうち数等政治的年功を積み、実利主義によってきたえられたイギリス中流的秩序によって言語とともに整理される。英国人の他人種に馴れる馴れ方はフランス人の馴れ方と違う。英国人が或他人種・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・ またたとえそれを一つの態度として許しても、そこには内在的な批評の余地があろうと思う。すなわち彼らは果たしてその態度を徹底させているか。もしくは徹底させようという要求に燃えているか。――私は思うに、彼ら日本 Aesthet の危険は、A・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫