・・・裁判官が再三注意を与えて、七、其方は火をつけたのではあるまい、火を運んで居て誤って落したのであろう、などというたかもしらぬ。その時お七はわろびれずに、いいえ、吉三さんに逢いたいばかりに、火をつけたらもし逢わりょうかと思うて、つけたのでござい・・・ 正岡子規 「恋」
・・・ ところが、宮原晃一郎さんは、わたしがことわったにもかかわらず、再三、小樽新聞にかくことをすすめられた。何でもかまわない、書きたいものを、書けるように書いていいから、とすすめられた。わたしも、それまでをことわる心持がなくていたとき、不図・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・裏のところで案内して来たひとに、私は何も話しに来たのではないんですからと再三たのむのだけれども、きっと日本の女を、皆の見えるところへ出したいと思ったのだろう。私は万策つきた形で、小高い台の上に並んでかけた。その時話していた人のその日の記念日・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・ ヒューマニズムの提唱が、その意識的、或は論者の社会的所属によって生じている矛盾の無意識な反映として内包していた誤れる抽象性によって、或る意味で文化の分裂を早める力となったことは、実に再三、再四の反省を促す点であろうと思われる。 文・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫