・・・理化学研究所長大河内正敏の計画は、軍需産業を都会に集中させて置くと被害を被るから、各地方に分散させようという表面の目的の外に、田舎の村の中に小さな作業所をどっさり拵えて、非常に簡単な分業を組織し、農村の婦人達がどんなに未熟練であっても、すぐ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・こんな時は木村の空想も悪戯をし出す事がある。分業というものも、貧乏籤を引いたもののためには、随分詰まらない事になるものだなどとも思う。しかし不平は感じない。そんならと云って、これが自分の運だと諦めているという fataliste らしい思想・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・新聞に従事して居る程の人は固より知って居られるであろうが、今の分業の世の中では、批評というものは一の職業であって、能評の功を成就せんと欲するには、始終その所評の境界に接して居ねばならぬ、否身をその境界に置いて居ねばならぬものだ。文壇とは何で・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・誰が命令するというでもないのに、一団の人々は有機体のように完全に協力と分業とで仕事を実現して行く。 私は息を詰めてこの光景を見まもった。海の力と戦う人間の姿。……集中と純一とが最も具体的な形に現われている。……力の充実……隙間のない活動・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫