・・・仰向けに倒れて力抜けがした全身をぐッたり、その手足を延ばした。 そこへ何物か表から飛んで来て、裏窓の壁に当ってはね返り、ごろごろとはしご段を転げ落ちた。迷い鳥にしてはあまりに無謀過ぎ、あまりに重みがあり過ぎたようだ。 ぎょッとしたが・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・恋愛についてこうした理想的な要請をする場合に、私たちはそのことを考えると力抜けがするのを感じる。これはどうしても社会制度一般の正しい建てなおしをしなくてはならないのである。精神的理想を主張するものは、その意味で一方必ず社会改革の根本的運動に・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・大分体が好くなったと云って、中大洲を二日捜して、八幡浜に出ると、病後を押して歩いた宇平が、力抜けがして煩った。そこで五日間滞留して、ようよう九州行の舟に乗ることが出来た。四国の旅は空しく過ぎたのである。 舟は豊後国佐賀関に着いた。鶴・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫