・・・勿論俳優の力量という制約があるが、あの大切な、謂わば製作者溝口の、人生に対する都会的なロマンチシズムの頂点の表現にあたって、あれ程単純に山路ふみ子の柄にはまった達者さだけを漲らしてしまわないでもよかった。おふみと芳太郎とが並んで懸合いをやる・・・ 宮本百合子 「「愛怨峡」における映画的表現の問題」
・・・組織してそれを着々と実現してゆく力量を、私たちの身についたものとしてゆきたいと思います。どう現実のものとしてゆくかということは、私たちの熱意と実行力にかかっております。 宮本百合子 「明日を創る」
・・・婦人画家が画家としてはたしてどれだけの力量をもっているかということはあらためて考えられなければならないけれども、かりに、その点でマイナスがあるとして、それというのもこれまで婦人全体の生活があまり差別的で、官立の美術学校でさえも女子の学生は入・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・一つは、作者の日々の感情に犇めいているさまざまの苦しさ、矛盾葛藤を、二十五歳の作者の力量では、人間的にも把掴しきれず、まして文学の作品としてそれを客観的に再現することは不可能であった。その結果、古代ペルシアの物語に飛躍して取材された。作者の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・にしろ、ポーラ・ネグリがいかにも女優としての力量を示した「マズルカ」にしろ、実にその多くが、母の悲しい犠牲にたたされていることである。女の生活のそういう悲しみ、諦めの面にふれて来ると、西洋の社会でも日本の社会でも、ちがいは殆んどないように見・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・ こんな小さい縮写でさえ、力量の目ざましさにうたれる宗達が、遠くに在るものが、近くにあるものより小さく見えるという日常の事実を、どうして知らないわけがあろう、彼は十分知っている。その上で、この三人ずつ二側の人物は、顔をこちらに向けている・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・私の文学的教養と力量とが、この紛糾と錯綜を、明確に洞察し、整理し得るであろうか。少なからぬ困難が予想されるが、私は読者の忍耐と誠意と自身の熱意とに信頼して、この仕事をやって見る。この人生に明らかな知性と豊かで健全な人間的情熱の発動を熱望する・・・ 宮本百合子 「意味深き今日の日本文学の相貌を」
・・・私の卒業した官立の女学校は、所謂品のよい、出来のよい画一にはめこまれていて、個性のつよさを愛さなかったから、当時の女学生として、力量は無くはなかったのに、社会的に能力を示す人は非常に少い。あとになってからは、大分変化したが。一級の中でも、女・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・自身の仕事については、力量に自信をもって精励であり、研究生のように勉強家です。今日と、明日の社会は、若い時代への健康な同情、人間より意志を理解しようとする良心の極少量さえも熱烈に要求しているのですから、私たちは野上さんが、若い時代の近側にあ・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・学校を、町を、家庭を、すこしでも住みよいところにするためには、お母さんがたの力量が待たれています。子供たちと母親たちとが協力して、住んでいる町にたった一つ、子供の遊び場がこしらえられないでしょうか。家庭をたのしいところとしたいという子供の希・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
出典:青空文庫