・・・永くつづきます、軍の方針としては、内地から全部兵を引き上げさせて満洲に移し、満洲に於いて決戦を行うという事になっているらしいです、だから私は女房を連れて満洲に疎開します、満洲は当分最も安全らしいです、勤め口はいくらでもあるようですし、それに・・・ 太宰治 「女神」
・・・しの泣きかたが大袈裟で、気障ったらしいと言ったわ、姉さんはね、あれで、とっても口が悪いの、あたしは可哀想な子なのよ、いつも姉さんに怒られてばっかりいるの、立つ瀬が無いの、あたし職業婦人になるのよ、いい勤め口を捜して下さいね、あたし達だって徴・・・ 太宰治 「律子と貞子」
・・・元の勤め口もその方面の失敗でしくじった事を、藍子は尾世川自身から聞いた。 その代り、気が向いたとなると、彼の教授ぶりは愉快極まるものであった。いい加減で、「今日はここまでにして置きましょう」としまいかけるが、「然し、面白いで・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・婦人が、一つの職業を中途ですてて又次の職業へと転々するうち、いつか、その傍から見れば持続性なくも見える経歴や年齢の関係により、益々失業率が増大し労働条件が悪化する社会では次第に自分の教養を活かすような勤め口を見つけることがむずかしくなり、そ・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
出典:青空文庫