・・・今日は一見大差なく目前の困難に圧せられているごとくではあるが、それどころか、勤労階級の男女は一層ひどい封建性の下で家庭生活を営んでいるのであるが、新たな歴史の担い手である勤労階級の社会関係の必然から、見とおしとしては結局、プロレタリアートの・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・―― この場合、勤労という実際問題について正しく理解し考える必要が示されています。ほんとにわたしはなにも考えずにただ家の中で働いて来たばっかりだよ、という母の歎息を、若い世代がくりかえしたいと思っていないならば、そして、時間がなくて、も・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・ 婦人が性の本然として生殖の任務をもっているということと、女は家庭にあるべきものという旧来の考えかたと、婦人が今日の社会事情の現実によって課せられている勤労の必然と、この三つのものは現代では未だ非常な紛糾、混乱した関係におかれていると思・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・五十円の宝くじを買って、百万円あたる、ということはバクチでないだろうか。勤労の所得と云えるかしら。政府が赤字やりくりのために思いついて、先ず五十円券をどっさり買わせ、それで第一段儲け、ついで五人のひとに百万円あてさせて、こんどは売れのこりに・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・СССРで勤労者は多くの権利をもち、例えば解雇するにも、工場で作業縮小の場合一ヵ月の内三日理由なく休んだ場合、二ヵ月以上収監された場合の外、大体労働者の承諾を必要とする。その代り責任はがっちり肩の上にかかっている。 十一月一日晴。・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・ 日本の勤労人員の幾割が農民であろうか。 約四十八パアセントが農業に従っている。 そのうち女性は何割だろう。 四十三パアセント強約六百三十二万人は女子及び子供である。そして、昭和十一年の調査によると、小学校を卒業した子供たち・・・ 宮本百合子 「新しき大地」
・・・この一生懸命で濃厚な作品に、本質的な未熟さとしてあるのは、庶民の生活感情と勤労者の生活感情とのちがいについて、作者がちっともわかっていないという点であるということを。「一つの芽生」は、弟の死という事実に面して、その悲しみをどこまでも客観・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第一巻)」
・・・これらの報告は、こんにちのソヴェト作家としてシーモノフの名と作品を知っている日本の人々に、シーモノフが工場の文学サークルから文学的誕生をしてのびて来るそれ以前の時期において、ソヴェト社会は、その勤労人民の日常生活にどんな文化、文学の開花の可・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・ 無産派文学の運動――すべての国で人民の多数を占める勤労階級の生活とその感情を表現する文学が、従来のブルジョア階級の文学にかわるべきであるという考えは、第一次ヨーロッパ大戦の後、旧い権威の崩壊と中流社会のプロレタリア化を経験したすべての・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・治安維持法の犠牲となった作家たちが、転向の動機を、めいめいの個人的性格の問題、インテリゲンチアと勤労大衆との間にある思想的ギャップ――インテリゲンチアの観念性という理由づけで、作品化したことについての疑問を提出したことは誤っていない。それぞ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
出典:青空文庫