・・・二人は底知れぬ谷に墜ち失せたり。千秋万古、ついにこの二人がゆくえを知るものなく、まして一人の旅客が情けの光をや。 しゅうど 美わしき菫の種と、やさしき野菊の種と、この二つの一つを石多く水少なく風勁く土焦げたる地に・・・ 国木田独歩 「詩想」
・・・一緒に依頼した共通の友人、菊地千秋君にも、その他の諸君にも、みんな同文のものを書いただけだ。君にだけ特別個人的に書けばよかったのであろうが、そういう時間がなかったことは前述の通りだ。あの依頼の手紙を書いて、君の気持を害う結果になろうとは夢に・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・な社会層の中に、プロレタリアとして歴史を推進させてゆく自覚ある労働者部隊の革命的な任務が、はっきりさせられると一緒にプロレタリア文学は、アナーキストの権力否定の文学とも違うし、貧窮文学でもないし、下村千秋のようなルンペン・プロレタリアートの・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
出典:青空文庫