・・・こういう芸術を徳川時代の民間の卑賤な芸人どもはちゃんと心得ていたわけである。 生まれてはじめて見た人形芝居一夕のアドヴェンチュアのあとでのこれらの感想のくどくどしい言葉は、結局十歳の亀さんや、試写会における児童の端的で明晰なリマークに及・・・ 寺田寅彦 「生ける人形」
・・・とあり、また名字正しき侍にはこの害なく卑賤の者は金持ちでもあてられるなどと書いてある。ここにも時代の反映が出ていておもしろい。雲萍雑誌には「西国方に風鎌というものあり」としてある。この現象については先年わが国のある学術雑誌で気象・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・生きる事が自己を表現することであり、その表現が創作であるならば、いかなる創作も虚偽であり卑賤であるとは言えないはずではないか。 それはただ表現を迫る生命とその表現方法との関係において、見るほかはない。人間には感心しない物を感心したらしく・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫